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原由子《婦人の肖像 (Portrait of a Lady)》 [音楽]

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〈鎌倉 On The Beach〉のPVに鶴岡八幡宮が出てくると、ああもうすぐ 「あれ」 なんだ、と思わず大河ドラマのこの先を考えてしまう。第39話で泰時が 「春霞たつたの山の……」 の歌を、間違えた和歌ではないかと実朝に告げると、実朝は別の歌を泰時に渡す。

 大海の磯もとどろに寄する浪破れて砕けて裂けて散るかも

この差し替えられたことになった歌の暗さとおそろしさとそのインパクトの深さに 「えっ?」 と思わず反応してしまった。三谷幸喜やるなぁと誰もが思ったはず。

ということはどうでもいいとして、原由子の《婦人の肖像》は《MOTHER》以来の31年ぶりのオリジナルアルバムなのだそうです。オリジナルアルバムとしては4枚目。サザンといえば江ノ島・鎌倉。暗いバックに白いオーヴァーサイズのシャツでたたずむ原由子のジャケットがめちゃめちゃカッコいい。

1stアルバムの《はらゆうこが語るひととき》はもう41年も前のアルバムだが、メインの曲〈I Love Youはひとりごと〉はカラオケで歌えば必ずウケるキラーチューン。ただし途中の語りを入れることが必須ですが。

原由子はサザンオールスターズのキーボーディストであり桑田佳祐の妻であるが、たとえば山下達郎・竹内まりや夫妻に較べると地味な印象があるかもしれないけれど決してそんなことはない。むしろ奔放に楽曲を作り歌う桑田をうまくコントロールして、ギリギリのところでそれ以上行かせないようにしているように思えるし、そのさりげないけれど的確な演奏は比類がない。つまり初期の頃はやんちゃだったし、今でも時に正当な方向を踏み外しそうなサザンの音楽性を屹立させている要は原由子である。

アルバム・タイトルに括弧付きで入っている 「Portrait of a Lady」 はヘンリー・ジェイムズの小説のタイトルでもあるが、おそらく関係はない。尚、ジェーン・カンピオン監督による同名映画がある (邦題:ある貴婦人の肖像、1996)。それとヘンリー・ジェイムズ原作の映画としてフランソワ・トリュフォーのちょっと気色の悪い映画《緑色の部屋》(La Chambre verte, 1978) があることに気がついた。
また〈鎌倉 On The Beach〉という曲のタイトルの 「On The Beach」 から連想するのは、古典SF小説として名高いネヴィル・シュートの『渚にて』(On the Beach, 1957) である。

サザンのYouTubeチャンネルには今回のアルバムの中から〈スローハンドに抱かれて〉が公開されているので (出演:遠藤憲一、森田想)、桑田佳祐と原由子の〈Change The World〉もリンクしておく (〈Change The World〉はワイノナ・ジャッドの歌唱がオリジナルだが、エリック・クラプトンのカヴァーで有名である)。


原由子/婦人の肖像 (Portrait of a Lady)
(ビクターエンタテインメント)
婦人の肖像 (Portrait of a Lady) [完全生産限定盤A] [CD + Blu-ray]




原由子/スローハンドに抱かれて (Oh Love!!)
https://www.youtube.com/watch?v=m9Af3nGQvfw

原由子/鎌倉 On The Beach
https://www.youtube.com/watch?v=9lUX44UUAfY

桑田佳祐&原由子/Change The World
https://www.youtube.com/watch?v=MSq2_3PG6VE

原由子/恋は、ご多忙申し上げます
https://www.youtube.com/watch?v=MUTm91vRsTY
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末尾ルコ(アルベール)

お久しぶりです。大河が贔屓の堀田真由の出番が終わった時点でリタイヤしましたが、そんなことはどうでもよくって(笑)、この前のNHK『SONGS』が原由子ゲストでして、トークも演奏もなかなか興味深かったです。
とは言えサザンオールスターズも桑田佳祐も原由子も、もうずっと積極的には聴いてませんでした。ずっと前はカセットでアルバム買ったりして、けっこう曲知ってましたが、いつしかわたしの嗜好に合わなくなってしまい。しかしこれまた心の狭い嗜好に陥ってたのではないかと、これを機にまた聴くようにしようかなと思ってます。
『SONGS』で話した内容では、サザンはそもそもエリック・クラプトンの圧倒的影響の下に発展したということで、ファンの間では下れたことかもしれませんが、わたしには新鮮に聴こえました。
それにしてもヘンリー・ジェイムズ、映画化作品多いですね。『鳩の翼』や『メイジーの瞳』もジェイムズなのですね。ほとんど読んだことないので、『ねじの回転』から読んでみようと思ってたところです(映画版は観てます)。



そう言えばたまたま最近読んだ『リアルサウンド』のインタヴューで黒沢清監督が『アルファビル』について言及してました。

https://realsound.jp/movie/2022/10/post-1148978.html

『アルファビル』の部分を抜粋すると次のようです。

///

ジョセフ・ロージーの『唇からナイフ』(1966年)とか、ゴダールの『アルファビル』(1965年)とか、それらの映画は、スパイのような人が出てくるにもかかわらず、もう何を求めて何と戦っているのか、本人たちにもよくわからない。それでも上からの指令に従って動いていて、ますますわけがわからなくなっていく(笑)。一種のメタ・パロディですよね。

///

『アルファビル』についての記憶が曖昧なので監督の話がどれだけ的を射ているか分かりませんが、おもしろい意見ではあると思いまして。

青山真治についてですが、『AA』はまだ観てません。これはぜひ観なくちゃですね。
ブログでも何度となく書いてますが、青山真治監督とは、ステージと客席という立場ですが、お話しできたことがあります。高知県立美術館で彼の『東京公園』を上映した時で、これはブログなどでも何度となく触れたことありますが、監督、わたしの矢継ぎ早の質問にとても喜んでくれていたと感じましたが、段取りしか頭にないと思しき司会の女性が「そろそれ時間ですので」と打ち切り。日本の「司会者」や「インタヴュアー」のレベルの低さを実感として理解できた一例となりました。
青山監督の死去、返す返すも残念です。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2022-10-23 08:22) 

ゆうのすけ

なるほど!〇ニクロのCMで 久々彼女を見ましたが
CMへの出演 初めて聴いたCMの歌。
ニュー・アルバムリリースということもあったんですね。^^♫~
最近新譜にも疎くなっちゃった・・・。^^;
『MOTHER』は持っているんですが もう31年も経っちゃった
時間の流れが怖い。。。♬~
by ゆうのすけ (2022-10-23 09:34) 

英ちゃん

そうか、最近良くテレビに出演してるのはアルバムの宣伝のためか(^_^;)
まぁ、歌手あるあるだけどね(;^ω^)
ユーミンも50周年でテレビ出過ぎだしね(^_^;)
by 英ちゃん (2022-10-24 00:46) 

mitu

SOSは私の青春時代のBGMでした
特に、はら坊の曲は大好きです^^

by mitu (2022-10-24 06:02) 

青山実花

原由子さんの、
大学時代のサークル内での人間関係の調整の
エピソードを読んだことがあるのですが、
こんな頭のいい女性がいるのかと、
平伏したくなるような聡明さでした。
素晴らしい方ですね^^




by 青山実花 (2022-10-24 08:36) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

今回の三谷幸喜の大河ドラマは
ストーリーの構築性を見るべきだと思うのですが。

私もサザンはそんなに熱心には聴いていません。
サザンとかドリカムとかミスチルとか、
有名過ぎるのでいつでも聴けるから、と思ってしまって
CDなども買わないんですが、
でも原由子の1st《はらゆうこが語るひととき》は
すぐれたアルバムなのでレコードを持っています。
今回のアルバムでも〈スローハンドに抱かれて〉など
クラプトンへのリスペクトがありますね。

アルファヴィルというタイトルについていえば
villeの付く都市名が意味もなく私は好きなのです。
アルファヴィルとかライツヴィルとかクラークスヴィルとか。
クラークスヴィルはもちろんLast Train to Clarksvilleです。

黒沢清のアルファヴィル評:
「もう何を求めて何と戦っているのか、本人たちにもよくわからない」
そうそう、まさにその通りです。
おそらくゴダールはジェームズ・ボンドのアンチテーゼとして
《アルファヴィル》を作ったのだと思いますが、
SFという設定なのにSF的シチュエーションが皆無なのは
トリュフォーの《華氏451》と同じです。
それなのにレミー・コーションを持ってくるのがフランス的ですね。
レミー・コーションとかタンタンとかガスリサとか
どれもフランス特有の匂いがします。

間章に関しては過去に私が書いた記事をご参照いただければ幸いです。

ランチに出かけた人のこと
https://lequiche.blog.ss-blog.jp/2013-01-30

Ce n’est rien, ce n’était rien —
それは何でもないし何でもなかった
https://lequiche.blog.ss-blog.jp/2014-10-20

青山真治監督の御逝去は大変残念としか言いようがありません。
by lequiche (2022-10-25 03:50) 

lequiche

>> ゆうのすけ様

原由子さんはユニクロのCMに出演されていたんですね。
知りませんでした。
観てみましたがちょっと 「こそばゆい」 ですね。
新譜のジャケットデザイン (というか写真) はカッコイイです。
こういうシンプルなのが好きなので
CDとアナログ盤と両方買ってしまいました。(^^;)

最近の新譜……私が最近ので注目してるのは
緑黄色社会と、あいみょんです。
by lequiche (2022-10-25 03:51) 

lequiche

>> 英ちゃん様

プロモーションですから仕方がないですね。
最近では山下達郎もユーミンも
宣伝して売れてナンボ、だと割り切ってるようです。(笑)
by lequiche (2022-10-25 03:52) 

lequiche

>> mitu 様

サザンお好きだったのですか。
原由子はなによりもその声が好きです。
心がやすまるというか、包容力のある声のように思います。
by lequiche (2022-10-25 03:53) 

lequiche

>> 青山実花様

おぉ、そんなことがあったんですか!
それがどんなことか具体的には知らなくても
なんとなくわかりますね。
原由子はサザンの、というか桑田さんの音楽に対する
理論的支柱です。
ゲス乙女の絵音クンとちゃんMARIの関係性に似てます。
by lequiche (2022-10-25 03:54)