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リバーサルオーケストラから派生していろいろ思うこと [音楽]

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リバーサルオーケストラ

ドラマ《リバーサルオーケストラ》のラストはなんとなく不完全燃焼だったが、それなりに面白かったことは確かで、でもチャイコフスキーの5番とかヴァイオリン・コンチェルトとか、この作者はチャイコ好きなのかなぁと思ってしまいました。

それでYouTubeでドラマで使われていた曲を聴こうとしているうちに、すぐに横道に逸れてしまって、そうそう、音楽界のオスカル様こと西本智美です (でも、オスカル様ってすでに古いなぁ)。
西本智美がチャイコフスキー記念財団ロシア交響楽団というのを振った5番の動画があって、これがもうすごいです。ドラマの最終回でも使われていた第4楽章 (36:34) から観ると、おぉぉ、素晴らしいアクション! 演舞とか武術とかの型みたいでメチャカッコイイです! こういうのもありなのかぁ、と思う。オーケストラをドライヴしているという感じ (画像下の 「もっと見る」 をクリックすると楽章毎のリンクがあります)。広上淳一とはまた全然違うけど (広上淳一というと、のだめカンタービレのことを思い出してしまいます。ジャンプする指揮者・片平元のモデルとも言われていますし)。

そうそう、エルガーの《威風堂々》もありました。チャイコフスキーは7番もあったけど、これは比較的普通。普通じゃないのかもしれないけれど、すでに西本イズムに毒されていて普通に思えてしまいます。

《リバーサルオーケストラ》のもうひとつの核は繰り返し出てくるチャイコフスキーのヴァイオリン・コンチェルトで、これは主人公の若い頃からの因縁の曲。YouTubeなどでも、さすがにあまたの演奏がありますが、とりあえずは五嶋みどりかなぁ。この前の記事で話題にしたコパチンスカヤの演奏もあるけど、これはちょっと……ワタクシ的には好みではないです。こういうふうに崩してしまうと、チャイコフスキーのテイストが無くなってしまうような気がして。ですからコパチンなら何でもいい! という人にはウケるのかもしれませんが。
一番の違いは第1楽章カデンツァの終結部、ヴァイオリンがトリルしているところにオケが入り始める個所ですが、五嶋みどりのほうが王道ですし何より品があります。トリルを美しく弾けるかどうかというのは重要。などと書く私は結構正統派なのかも。

今月号のタワレコの宣伝誌『intoxicate』冒頭には作曲家・近藤譲が特集されていました。彼の著作『線の音楽』は最近、復刊されましたが私は最初に出版されたときからのファンです。有名な《視覚リズム法》は須藤英子や井上郷子の演奏の動画を観ることができます。
須藤英子を聴いていると関連動画としてリストアップされるのが一柳慧の《ピアノメディア》です。たぶん一柳慧の作品のなかで最も有名な一曲だと思います。昔から高橋アキの演奏で聴き込んでいますが、須藤英子のは弾いている映像があるのでこれをリンクしておきます。この右手はどうなのでしょうか? 人間シーケンサーです。

最後に。9日前にアップされたYOASOBIの〈アイドル〉は、山崎怜奈もFMで 「最初聴いたとき鳥肌が立った」、そして 「YOASOBIってどこまで行くんだろう?」 と語っていましたが、かなり戦略的な作り方だと思います (ハイテンションなきゃりーぱみゅぱみゅかと思った)。全体的に薄くかかったノイジーなボイチェン風なヴォーカルのささくれ感が秀逸ですが、最後のほうの (2:31〜)

 誰かに愛されたことも
 誰かのこと愛したことも
 ない
 そんな私の嘘がいつか本当になること

の部分で 「愛したことも」 から 「ない」 で転調するあざとさがAyaseっぽいです。

やや大きめの書店に行ったら坂本龍一の楽譜まで売っていた。それは良いんですけど 「イ短調で弾ける戦場のメリークリスマス」 とかあって、なるほど〜、と納得してしまった (原曲は変ロ短調)。でもそうすると和音はどうなっているのだろう? たぶん違う和声で簡略化されているんだろうなぁ。ちなみに『Avec Piano』の楽譜は52刷でした。
以前の萩尾望都の記事にリンクしておいたScholaの〈戦場のメリークリスマス〉の解説をもう一度、貼っておくことにする。11th、13thの使い方の説明が、やはりその名の通り、教授です。


リバーサルオーケストラ Blu-ray BOX (バップ)
リバーサルオーケストラ Blu-ray BOX



近藤譲/線の音楽 (アルテスパブリッシング)
https://store.shopping.yahoo.co.jp/sitemusicjapan/9784865591019.html


西本智実/チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調
チャイコフスキー記念財団 ロシア交響楽団 (2006.06)
https://www.youtube.com/watch?v=DsHVYDOuuVA

西本智実/エルガー:行進曲 威風堂々 第1番
https://www.youtube.com/watch?v=BD_BstgteA8

Midori/Tchaikovsky: Violin Concerto
https://www.youtube.com/watch?v=RUoWgJDZ0M8

Patricia Kopatchinskaja/Tchaikovsky: Violin Concerto
https://www.youtube.com/watch?v=-1MTqZQ9rA0

井上郷子/近藤譲:Sight Rhythmics (1975)
https://www.youtube.com/watch?v=DbQbcjA29XI

須藤英子/一柳慧:Piano Media
https://www.youtube.com/watch?v=xus4APJcELw

YOASOBI/アイドル
https://www.youtube.com/watch?v=ZRtdQ81jPUQ

Schola 坂本龍一/戦場のメリークリスマス 解説
https://www.youtube.com/watch?v=mBctM3EwPno
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hide-m

私も観ました。聴きました。このようなドラマを作ってほしいです。
by hide-m (2023-04-23 04:47) 

末尾ルコ(アルベール)

西本智美はオスカルなのですね。アンドレにも少し似ている気もしますが、『ベルサイユのばら』には明るくないわたしなのでこれ以上の言及は避けましょう。
ところで最近『想い出のマルセイユ』という映画を観て、あらためて監督のジャック・ドゥミのフィルモグラフィをチェックしてみたのですが、実写版『ベルサイユのばら』を監督したの彼だったんですね。『シェルブールの雨傘』の監督が『ベルサイユのばら』も・・・そのシュールな現実に軽く眩暈を起こしました(笑)。うーん、バーティゴー。
それはさて置き西村知美、母も好きそうなので今後レギュラーで鑑賞していきます。

チャイコフスキーの5番やヴァイオリン・コンチェルトは日本ではいろんなシーンでよく聴こえてきます。これら曲は世界的に同じように愛好されているのでしょうか。それとも日本で特になのか。とにかくチャイコフスキーは日本人の嗜好に合っている感はあります。

YOASOBIの「アイドル」、視聴しました。意欲的な楽曲ですね。月並みな感想ですが、今後さらに愉しみが増えました。

坂本龍一の「Rain」素晴らしいですね。『ラストエンペラー』の曲はすべて好きですが、中でも「Open the Door」「Rain」、そしてデヴィッド・バーンの作曲ですが、「Main Title Theme」の3曲がめちゃめちゃ好きです。
これも『100年インタビュー』の中でのことですが、「なりたい人は?」と問われ、「ゴダール」と答えてるんです。坂本龍一ほどの人に対して「なりたい人」でもなかろうとは思いますが、躊躇なく「ゴダール」と答えたあたりにも映画に対する深い理解と愛情が感じられました。そして「映画音楽」については、「すごくロマンティックな感じがする」と、これまた驚くような答えを出してきて、彼が映画、映画音楽に取り組んでいた姿勢というものについてわたし自身が持っていたイメージをあらためねばと感じた次第です。RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2023-04-23 20:06) 

バク・ハリー

リバオケ、私も楽しく観ていたので、もっと続くと良かったのに残念でした。
YOASOBI、ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのにの3組を夜好性とか言うそうですが、個人的には、ずとまよの「秒針を噛む」を初めてYoutubeで聴いた衝撃が、すごかったです。イヤホンつけたまま寝落ちしていて、思わず飛び起きてしまいました。
by バク・ハリー (2023-04-23 21:59) 

lequiche

>> hide-m 様

コメントありがとうございます。
音楽、しかもクラシックを主体としたドラマで
とても楽しかったですね。
音楽ドラマとしては《のだめカンタービレ》以来かな
とも思います。
このドラマの続編があると良いんですが。
by lequiche (2023-04-24 03:01) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

wikiの『ベルサイユのばら』の解説には
オスカルについて次のように解説されています。

 オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ
 (Oscar François de Jarjayes)
 代々フランス王家の軍隊を統率してきたジャルジェ伯爵家
 の令嬢。レニエ・ド・ジャルジェ将軍 (François Augustin
 Regnier de Jarjayes) と、ルイ13世の時代に宮廷画家を
 務めるも忘れ去られたロレーヌ公国の画家ジョルジュ・ド・
 ラ・トゥール (Georges de La Tour) の曾孫である貧乏貴
 族の令嬢ジョルジェットとの六女 (末娘)。ジャルジェ将軍
 が男児に恵まれなかったため、男の子のように元気な産声
 をあげたオスカルは後継者になるべく男性として育てられ
 た。

ジャルジェ将軍とジョルジュ・ド・ラ・トゥールは実在の人物です。
令嬢ジョルジェットというあたりから創作になるわけですが、
「ジャルジェ」 「ジョルジュ」 という似た名前を用いているところに
池田理代子のひらめきがあります。
つまりオスカルはジョルジュ・サンド (George Sand) と同じく
男装の麗人なわけですが、このジョルジュとも被ります。

ジャック・ドゥミの《ベルサイユのばら》という映画を
私は未見ですが、ジャック・ドゥミといっても
製作の主導権は日本側にあったのではないでしょうか。
ですから、おそらく《シェルブールの雨傘》のクォリティとは
比較にならないように思えます。
未見なのにこんなことを言っては失礼なのですが。

チャイコフスキーの作品はやや通俗の面もありますが、
バレエ音楽も含めて世界的に演奏されているように思います。
ピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲も定番ですね。
3大バレエ音楽ももちろん同様に定番です。

私が最初に観たベルナルド・ベルトルッチの映画は
《暗殺のオペラ》です。
もちろん封切りではなかったのですが、
その頃もまだベルトルッチへの評価はそんなでもなく、
しかし山野浩一という先鋭的SF作家が
ベルトルッチを高く評価していたので観たという記憶があります。
そのベルトルッチの映画音楽を坂本龍一が書いたということに
驚嘆しました。
山野浩一の選択眼は間違っていなかったという意味です。

デヴィッド・バーンについても
大貫妙子がトーキング・ヘッズを高く評価していて、
聞いたときは意外な感じがしましたが、今思えばさすがです。

同様に坂本龍一がゴダールというのも意外に感じますけれど、
私が最初に観たゴダールは《ウイークエンド》で、
ゴダールの初期の映画音楽はミシェル・ルグランが多いのですが、
《気狂いピエロ》と《ウイークエンド》の音楽は
アントワーヌ・デュアメルなんですね。
デュアメルはメシアンから音楽を学んだ人でもあり、
ヴァイオレントに思えるゴダールのこの2作品を
デュアメルが担当していたというのは必然のようにも見えます。
映画音楽はむずかしいですが面白いです。
武満徹が数多くの映画音楽を担当していたのも
単純に収入を増やしたかったからだけではなく、
そうした面白さにはまったからなのではないでしょうか。
by lequiche (2023-04-24 04:02) 

lequiche

>> バク・ハリー様

同感です。10回では短いですよね〜。
続編を望みます。(^^)
「夜好性」 という言葉は知りませんでしたが、
確かに皆、グループ名が夜への偏愛を標榜しているようで。
ずとまよは椎名林檎的テイストも感じますが、
もう少ししなやかで、新しい音だなと思います。
なにかのきっかけで胸にささってくる音楽ってありますね。
by lequiche (2023-04-24 04:11)