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1982年のジャパン [音楽]

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Ryuichi Sakamoto, David Sylvian, Yukihiro Takahashi (1982)

デヴィッド・シルヴィアンの在籍していたバンド〈JAPAN〉をサーチするのはむずかしい。ジャパンという単語が一般的過ぎるため、関係のない内容ばかりが上位に来てしまったりするし、それに〈X JAPAN〉という日本の有名バンドがあるため、余計に困難が伴う。

JAPAN は1974年~1982年に存在していたイギリスのバンドであるが、最初はグラム・ロック・フォロアー的なヴィジュアルから始めたにもかかわらず、3枚目のアルバム《Quiet Life》(1979/Hanza) から音楽性が変化してゆき、さらに次のアルバム《Gentlemen Take Polaroids》(1980/このアルバムからVirgin Recordsとなる) の後、ギタリストのロブ・ディーンが脱退してしまったため、よりギターレス的サウンドが主体になっていった。坂本龍一などとの関係性が深くなったこともその傾向を助長させたように思われる。最後期には土屋昌巳がギタリストとして参加している。アルバムでいえば《Oil on Canvas》(1983) である。
尚、《Oil on Canvas》の最後のトラックであるスタジオ・レコーディングによるリチャード・バルビエリ作の〈Temple of Dawn〉は三島由紀夫の『曉の寺』のことであり、三島へのリスペクトと思われる。

このアルバムは Recorded: November 1982 との表記があるが、最後のライヴはen.wikiによれば1982年12月16日・名古屋となっている。
この頃のパフォーマンスがどのようなものだったのかは、YouTubeなどを見てもあまり動画が存在しないし、あってもこの時期のものでなかったり出所が不明だったり画質が悪かったりで残念である。当時の雰囲気を一番よく映し出しているのはBBCのスタジオ・ライヴ風の動画 (a) であるが、曲目は〈Nightporter〉と〈Art of Parties〉で、前者は《Gentlemen Take Polaroids》に入っているジムノペディ風な雰囲気の静謐な曲。シルヴィアンの横にテープ・エコーが一瞬映るがまだ当時はこういう機材も使われていたのだろうか。後者は《Tin Drum》(1981) に収録されているリズムを前面に押し出したこのアルバムを象徴するような曲であり、土屋のギタープレイがよく分かる。この2曲は収録ヴィデオの最後の2曲で、その前にも演奏があったようにも見受けられるがフル・ヴァージョンがあるのかどうかもわからない。

音だけなら1982年12月08日と記されている武道館ライヴがYouTubeにあるが、坂本龍一、矢野顕子が加わった〈Bamboo Music〉(b) と高橋幸宏が加わった〈Taking Islands in Africa〉(c) などが存在している。

よくわからないのは、Chapter One というレーベルからリリースされている《The Final Show》というCDであり、NAGOYA, JAPAN, 6.12.82 と記されているので12月6日の名古屋のライヴということだが、JAPANのファイナル・ライヴは1982年の12月16日ということになっていて、このCDがファイナルの音なのか、それとも6日と16日と両日、名古屋でライヴがあったということなのかどうかもわからない (もし16日にしか公演がなかったのだとすれば、記載のミスという可能性もある)。
非常に画質の悪い Live in Nagoya という動画も存在するが (d)、これが16日の映像とするのならば、Chapter One のライヴは異なる音源のような気がするのである。最も Chapter One の音は全体的にくぐもっていて、ところどころ大雑把にカットしてつなぎ合わせていたりするので、ある曲をやったのかやらなかったのか、というような比較では突き止められない。
BBCなどの動画に較べると、このChapter One盤ライヴの土屋昌巳のギターワークはあまり良いとは思えないのである。客席も嬌声が聞こえるとはいえ、それほど人数が入っていないように感じる。

おそらく武道館ライヴを収録したと思われるアナログ3枚組のレコードがあったはずなのだが、今、レコード棚を探しても出てこないので、手がかりは失われたままである。このアナログの3枚組も Chapter One もおそらくブートなので、ネットを含めてデータとして出て来にくいのかもしれない。ただ記録としては貴重であると思う。
最近、《Quiet Life》の再発アナログ盤を手に入れたが、オリジナル盤より肉厚な重量盤でちょっと笑ってしまった。JAPANはリミックス等が多いので、完全でなくてもいいからJAPANのコンプリート盤を渇望するのだけれど (完全でないコンプリートというのは形容矛盾だが)、全アルバムの枚数が少ないし、1〜2枚目はシルヴィアンが黒歴史だと否定していることもあって、結果としてそこまでの需要はないのかもしれない。


(a) https://www.youtube.com/watch?v=uaSak_o9IEQ
(b) https://www.youtube.com/watch?v=Y8km4OTtqzY
(c) https://www.youtube.com/watch?v=3AQS3HFQ3_k
(d) https://www.youtube.com/watch?v=r4el3SPCSOs


JAPAN/Oil on Canvas (ユニバーサルミュージック)
オイル・オン・キャンヴァス(紙ジャケット仕様)

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シルフ

懐かしいですね。アルバム持っていました。意外といい曲もあったんですが、日本ではグラム・ロック扱いで纏められて評価が低かったですね。
by シルフ (2015-12-16 07:19) 

Speakeasy

やはり、lequicheさんは、ブート盤を購入する程のジャパン・ファンだったのですね!

私のブログのコメント欄に、わざわざデヴィッド・シルヴィアンの動画のリンクを貼る必要も無かったですね。お見逸れしました(笑)

ところで、高橋幸宏氏のボーカルスタイルは、デヴィッド・シルヴィアンの影響が強いと思っていたのですが、lequicheさんはどう考えますか?

by Speakeasy (2015-12-16 18:43) 

lequiche

>> シルフ様

最初にグラムっぽい雰囲気で売るというのは
Hanzaの戦略だったらしいです。
それで、バンド名がJAPANだったこともあり、
日本のミーハー系に支持されているという低評価でしたが、
《Quiet Life》がそれらを打ち砕いたことは確かです。
ただ、1〜2枚目もそれなりにいいとは思いますけど。
by lequiche (2015-12-16 19:45) 

lequiche

>> Speakeasy 様

いや、もっとマニアな人はいっぱいいますから。(^^;)
ただネットにはあまり情報が存在しません。
昔のバンドですから仕方がないといえばそうですけど。

Forbidden Colorsは最初、
デヴィッド・ボウイが歌うということになっていたらしいのですが、
いろいろとオトナの事情があってシルヴィアンになったので、
つまりシルヴィアンはボウイの代役です。
同じグラム系というくくりから選ばれたのでしょう。

高橋幸宏とシルヴィアンだと
ユキヒロさんのほうが年齢が上で経歴も長いですから、
影響があるとしたらユキヒロ→シルヴィアンですよね。
でも、歌唱法としては2人はちょっと違うような気がします。
JAPANのドラマーであるスティーヴ・ジャンセンが
ドラミングについてユキヒロさんを師と仰いでいることは確かですが。

ユキヒロさんのお兄さんは信之といって、
グループ・サウンズの時代、ザ・フィンガーズという
インストゥルメンタルバンドをやっていて、
この時の1stギタリストが成毛滋です。
その影響があったのか、ユキヒロさんの最初期の仕事は
グループ・サウンズ系のバックバンドとかだったと思います。
by lequiche (2015-12-16 19:46) 

Speakeasy

>歌唱法としては2人はちょっと違うような気がします。

そうですか~昔、YMOを聴いて、デヴィッド・シルヴィアンみたいと勝手に思ってました(笑)

>ユキヒロさんの最初期の仕事はグループ・サウンズ系のバックバンドとかだったと思います。

グループ・サウンズと言えば、67~68年頃ですよね。思った以上に長い経歴を持っているんですね!

以前、オフコースのセカンド・アルバム「この道をゆけば ⁄ オフ・コース・ラウンド2」(1974年)のクレジットに幸宏さんの名前を見つけて、得した気分になった記憶がありますが、wikiを見たら、ガロのメンバーでもあったのですね。オドロキです!!

by Speakeasy (2015-12-16 20:21) 

lequiche

>> Speakeasy 様

wikiを読みましたがガロのメンバーでなくバックバンドと書いてあります。
オフコースもやっていたということですが、
いわゆるスタジオ・ミュージシャンみたいな感じですね。

ガロはCSN&Yフォロアーと言われていたそうですが、
1stアルバムだけ聴いたことがあります。
すでに歌謡曲っぽい内容で、
間奏に奇妙なオーボエソロみたいなのがあったりして時代を感じました。
あれ、今だったらありえないです。

そのガロの1stが1971年で、ミカ・バンドが72年。
この1年でこんなに音が違うのかな、とも思いますが、
つまりグループ・サウンズまではそのルーツが歌謡曲なんだと思います。
by lequiche (2015-12-17 00:33) 

末尾ルコ(アルベール)

確か「音楽専科」で、JAPANやらYMOやらのメンバーが登場人物の漫画がありました。わたしはパブリック・イメージ・リミテッドとかが好きで、当時はさほどJAPANを聴いてませんでしたが、「錻力の太鼓」など今聴いても心地いいです。アルバムを制作するインスピレーションとなったシュレンドルフ監督の「ブリキの太鼓」は当時の文化シーンに大きなインパクトを与えていましたね。

                    RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2015-12-17 01:04) 

lequiche

JAPANとYMOのマンガってネットで見つけました。
はじめて見ましたけど面白そうです。
YMOというと、つい《Service》のS.E.T.を連想してしまいますが。
あ〜、PILですか。
1stとYMOのソリッドステートと、両方とも1978年なんですね。

シュレンドルフの映画は残念ながら観ていません。
映画の予告編だけ観たような記憶があります。
そのうち是非観てみたいと思います。
by lequiche (2015-12-17 01:54) 

Speakeasy

何度もすいません。

幸宏さんのボーカル・スタイルは、フー・マンチュー唱法といって細野さんが名付けたそうですね。

やはり幸宏さんが、編み出した彼独自の歌い方であるようです。

by Speakeasy (2015-12-21 21:16) 

lequiche

>> Speakeasy 様

いえいえ、全然OKです。
でもフー・マンチューって……… (^^;)

ユキヒロさんの曲の終わりかたとして、
終わるそぶりもなくて
突然ぶっち切れたように終わるのを
「ユキヒロ終わり」 とよく言ってたのですが、
でも今ではすでに伝説の人なのかもしれませんね。
by lequiche (2015-12-22 01:30) 

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