SSブログ

カーネーションの《Multimodal Sentiment》 [音楽]

carnation_naoe_160824.jpg

最近のTVで一番楽しみにしている番組は、この前までは《関ジャム》だったのだが、今は《ゴロウ・デラックス》にゾッコン。毎週、課題図書が1冊あって稲垣吾郎がそれについてゲストと語るのだが、その本の作者のこともあるし、そうじゃなかったりもあるしだけれど、これがとても面白い。もう随分続いている番組らしいのだが、迂闊にもずっと知らなかった。

課題図書といってもそんなに堅苦しい本ではなくて、たとえば8月11日の放送だと『オレンジページ』のミルクセーキの特集で、ゲストはタモリ組の能町みね子。そのせいか、ややタモリ倶楽部っぽい展開になってしまったのだけれど、あっちの店こっちの店のミルクセーキがおいしいという話のなかで、稲垣のドタバタしない個性がそこはかとなく出て来ていて心地よい。
前の放送を探してみると3月には魔夜峰央先生の回もあって、話題はもちろん『翔んで埼玉』だったのだが、動いている魔夜先生のお姿を久しぶりに拝見できて満足。先生の奥様もゴローちゃん目当てに一緒にスタジオに来られたとのことで笑いました。
魔夜峰央のギャグには独特のノリがあって、ダメな人はダメなのかもしれないが、でもドテ医者とか、最初に読んだときは魔夜峰央の創出語だと思っていたらそうじゃないのにもっとびっくり。

ところで、たとえば山崎まさよしの〈One more time, One more chance〉という曲を私はSotte Bosseのカヴァーで知ったのだけれど (そのことは→2015年10月31日ブログ参照)、必ずしもオリジナルからじゃなくて曲を知るということはよくあります。
山崎まさよしのこの曲の場合は、桜木町というたったひとつの固有名詞から限りなく連想が広がって、過去の記憶がプルースト的に甦るという、私にとっての奇跡みたいな曲だったのだが、そこまででなくてもこうしたヒットチューンはその時点での身の回りの何かの記憶と常に結びついているような気がしてならない。

それとは少し違う事例もあって、たとえばカーネーションというグループは私の記憶のなかでは〈夜の煙突〉のオリジナル・シンガーという認識しかなかった。つまりそれをカヴァーした森高千里を聴いたほうが先で、その単純な歌詞がいかにも森高らしくて、アルバム《非実力派宣言》のなかでダントツに素晴らしい。森高と直枝政広 (当時は直枝政太郎) はその歌詞構造の類似から引き合ったのだろうと想像していた。
カーネーションのアルバム自体も気にはなっていたのだけれど、つい後回しにしていたのに、ついこの前、新譜の《Multimodal Sentiment》のPVを見たとき 「これだ!」 と思って、すぐにHMVのボタンをクリック。繰り返し聴いている。

音はムーンライダーズやはっぴいえんどなどを連想するし、日本のXTCなどとも言われたりするようだが、PVの〈いつかここで会いましょう〉を観ているとその佇まいがなんとなく大瀧詠一ふうに思えてしまう。
ノスタルジックに見せて、でも実は似非ノスタルジックだと思わせたいところがやっぱりノスタルジックなモードなのだと私は感じる。インチキ電子音楽みたいなイメージを醸し出してくるところはフランク・ザッパ的な屈折した表現だともとれるけれど、でもそのちょっと古めのストレートなロックのビートが心にズンと響く。
つまり最新鋭らしくて、同時に古風なところが魔夜峰央にも通じる (強引ですが)。だって魔夜峰央の原点って細川智栄子 (旧・千栄子、知栄子) のような気がするし。ですよね?

でも実は〈いつかここで会いましょう〉の歌詞のなかの 「風を切る雲が走ってゆく土手できみを思う」 なんて、まるで三枝夕夏の曲のタイトルみたいで、それが私の記憶のセンチメンタルな深層を揺り動かす懐かしさにつながっているのかもしれない。幾つもの過去の記憶は堆積して地層のように縞模様を作っていて、それこそが知らずに年齢を重ねているという具体的な証拠なのだ。


CARNATION/Multimodal Sentiment (日本クラウン)
Multimodal Sentiment




カーネーション/いつかここで会いましょう
https://www.youtube.com/watch?v=mX1tcHNq8t0

森高千里/夜の煙突
https://www.youtube.com/watch?v=b9ZMzQ3-ERk
nice!(75)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 75

コメント 6

末尾ルコ(アルベール)

XTC、フランク・ザッパ・・・拝読していると、ずっとご無沙汰だったこの人たちの曲もまた聴きたくなります。

>魔夜峰央の原点って細川智栄子のような気がするし。ですよね?

ううっ!お二人とも未読なので、すぐに「ですね~」と言えないわたしですが、また楽しみができました。

>過去の記憶がプルースト的に甦るという

なるほど!余談ではありますが、ジェラール・ド・ネルヴァルはお好きでしょうか?プルーストより前に『シルヴィ』を読み、その後フランス文学から離れられなくなったわたしです。 RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2016-08-24 02:18) 

Speakeasy

↓山崎まさよしの「One more time, One more chance」は、新海誠監督のアニメーション映画『秒速5センチメートル』の主題歌として耳にしました。心に残る素敵な曲ですね!

https://youtu.be/4Flho2UdG40

「夜の煙突」懐かしいです!『非実力派宣言』は私が買った唯一の森高千里のアルバムです。森高よりもカーネーションの方を先に知っていました。知ってはいたけれど、CDは購入したことありません・・・今聴き直してみると、確かにニューウェーブというか、XTCを彷彿させる演奏で改めてカーネーションに興味が湧いてきました!!

by Speakeasy (2016-08-24 19:24) 

lequiche

>> 末尾ルコ(アルベール)様

XTCやザッパと書きましたけど、
実は私はあまりよくわかってないのです。
特にザッパというのは、何枚か聴いたのですが、
面白い部分もあるけれど、う〜ん……という感じですね。
やはりその時代だからこそ共感できる意味合いを持つ
音楽なのではないでしょうか。

同様に、魔夜峰央は万人に向くギャグマンガではありません。
ギャグというより脱力したナンセンスであって、
形容がおかしいかもしれないですが
マニエリスムとマンネリズムで、
面白くない人にとっては全然面白くないかもしれない、
と思います。

ネルヴァル、そうなんですか。
ネルヴァルは有名な詩をちょっと読んだくらいです。
すみません。
全集が1冊だけありますが揃えられませんでした。
それとシルヴィとオーレリアの原書がありますが
読んでないです、というか読めません。(^^;)
今後の課題ですね。
by lequiche (2016-08-25 08:06) 

lequiche

>> Speakeasy 様

おお、きれいなアニメですね。
絵の雰囲気がちょっと斬新です。
この曲は使いたがる人が多いんじゃないでしょうか。

おぉ、カーネーションのほうが先。さすがです。
というか私は森高もオンタイムではなくて
後から聴いたのですが。DVDは全部あります。(^^;;;;)

カーネーションは5人の頃のが気になっていて、
でも買うまでに至らなかったというのが私も本音です。
それはたとえばムーンライダーズなんかでも同じで、
買うか買わないかの境目って何なんでしょうか?

そういうバンドって、妙にマニアックな人が必ずいて、
それがかえって私みたいな一般的リスナーにとっては
垣根になってしまっているような気もします。
まあ言い訳なんですけど。(笑)

今回のアルバムジャケットはジャンクなものの集積ですが、
TEACの4chが珍しいモデルで目を引きます。
つまりそういう音楽なんだ、という証なんでしょうね。

ところで先日ご紹介のセックスピストルズ、
買いましたが、まだ開封していません。(早く聴け〜! ^^;)
by lequiche (2016-08-25 08:11) 

ぼんぼちぼちぼち

能町さんの影響でミルクセーキのプチブームがきそうでやすね。
散歩の達人の喫茶店特集号でも某店のミルクセーキを紹介しておられやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2016-08-27 15:07) 

lequiche

>> ぼんぼちぼちぼち様

なるほど、そうなんですか。
早速、バックナンバーを見てみたいと思います。
あ、表紙が江口寿史ですね。(^^)
by lequiche (2016-08-27 17:06) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0