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デヴィッド・シルヴィアン《Brilliant Trees》 [音楽]

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デヴィッド・シルヴィアンのベストは最初のソロである《Brilliant Trees》だと思う。もちろんアルバム毎にだんだんと音楽的な深みとかは増していくのだけれど、ロックとしてのリズムが欲しいと私は思うので、つまりある意味、いつまでもジャパンの幻影を追っているというのは確かにあるのかもしれないと思う。どんどんリズムが無くなっていってしまうのは、そうした沈潜した静謐な音楽へと行きたいのかもしれないのだがリスナーにとっては少ししんどい。

近年のアナログ盤復活に乗ったのか、アナログが再発されている。今回のはソロになってからの最初の4枚、つまり《Brilliant Trees》(1984)、《Archemy》(1985)、《Gone to Earth》(1986)、《Secrets of the Beehive》(1987) である。これら4枚は1年に1枚という規則的なインターヴァルでリリースされたが、以降はソロでない作品が続くため、この最初の4枚をアナログで再発するということには一定の意義がある。つまり比較的ロックな作品であるということにおいて。
ところが《Secrets of the Beehive》以外はジャケット・デザインがオリジナルではない。《Brilliant Trees》は黄色地の中央にワクをとったポートレイトだったのが、今回はポートレイトのみが拡大されているのでそれだとわかるが、《Archemy》と《Gone to Earth》は新たに起こされたデザインである。こういうのってどうなのだろうか (尚、《Secrets of the Beehive》もロゴの位置などがオリジナルとは微妙に異なる)。
また《Secrets of the Beehive》のボーナス・トラックは最初のリリース時は〈Forbidden Colours〉だったが、CDがリマスターされたとき〈Promise〉に差し替えられた。今回のアナログ盤もこのリマスター盤を踏襲していて〈Promise〉である。〈Forbidden Colours〉とは大島渚の映画《戦場のメリークリスマス》(1983) のテーマ曲のヴォーカル・ヴァージョンである。

昨年は、ジャパンで最もポピュラーなアルバム《Gentlemen Take Polaroids》と《Tin Drum》もアナログ盤が再発されたのだが、幸いなことにデザインはオリジナル通り。だが、それぞれ45rpm2枚組という仕様で、Mobile Fidelityかと思ってしまう。45rpmは回転数を上げることで音質を稼ごうとしているのだろうが、サーフェスノイズもせわしなくなってしまうような気がしてあまり好きではないのだ。
ただ、どちらにせよ一定の需要が見込まれるからこうしたアナログ再発がされているのだろう。オリジナルがアナログ盤で出されたアルバムは、LPジャケットとしてのイメージが残っているので、CDで出されたものはLPのミニチュア化でしかなくて、つまり軽薄な外見のCDより、LP本来の存在感をどうしても求めてしまうのが最近の需要なのだろうと思う。それは音楽配信で良しとする感覚とは全く反対のベクトルである。そうしたアナログかデジタルかという選択は今後も続いていくのだろう。

話を戻して《Brilliant Trees》である。
話題になったのは4曲目の坂本龍一が入っている〈Red Guitar〉だが、カッコよくていかにもシルヴィアン風な音作りに懐かしさを覚えてしまうのが最初の曲〈Pulling Punches〉である。ジャパンの3rd《Quiet Life》からのシークェンス・パターンをモロに打ち出す方法論が次第にリズムを重視した方向になっていった結果が《Tin Drum》となり、その延長線上でさらに進化したのがソロ1stのこのアルバムなのではないかと思う。
〈Pulling Punches〉で一番目立つのはトランペットのマーク・アイシャムだが、この曲でギターを弾いているのはロニー・ドレイトンで、彼はビル・ラズウェルのマテリアルのアルバム《One Down》(1982) にも参加しているし、ジェイムス・ブラッド・ウルマーの《Blues Allnight》(1989) にもその名前がある。
ブラッド・ウルマーは80年代の終わり頃、LIVE INNで聴いたような記憶があるが定かでないし、あまり印象も残っていない。だがドレイトンはその系統のギタリストなのだと思えばそういう感じもする。
そして坂本龍一の1984年といえば《音楽図鑑》であり、シルヴィアンの音作りにもその影響がみられる。さらにいえば、どちらかというともう少し後の、もっとキツい音に近い。

《Secrets of the Beehive》の後、シルヴィアンにはしばらく双頭バンド的なコラボのアルバムが続く。80年代後期のホルガー・シューカイや90年代始めのロバート・フリップなど。ソロとしてのアルバムは1999年の《Dead Bees on a Cake》まで無いのだ。そして21世紀になってからは、いわゆる静寂、沈潜というような音づくりがメインとなり、それはそれで濃密な作品なのだが、やはり私はリズムが欲しいのだ。

ブロンド・レッドヘッドがシルヴィアンをフィーチャーした〈Messenger〉はそれなりに聞きやすい。下記にリンクしたのはなぜかタルコフスキーの動画になっているが、《Brilliant Trees》に収録されている〈Nostalgia〉はタルコフスキーへのオマージュとして書かれた曲である。


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David Sylvian/Brilliant Trees (12inch analog/Virgin)
Brilliant Trees -Hq- [12 inch Analog]




David Sylvian/Secrets of the Beehive (12inch analog/Virgin)
Secrets of the.. -Hq- [12 inch Analog]




David Sylvian/Pulling Punches
https://www.youtube.com/watch?v=aD5YHfIvYxc

David Sylvian/Brilliant Trees
https://www.youtube.com/watch?v=XfhGDTTR99Y

Blonde Redhead feat. David Sylvian/The messenger
https://www.youtube.com/watch?v=y_edyyjbDKE

Japan/Nightporter & Art of Parties
(Art of Partiesのギターは土屋昌巳)
https://www.youtube.com/watch?v=uaSak_o9IEQ
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