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井上陽水を聴く [音楽]

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井上陽水 (2017, Realsound.jpより)

金曜日の夜、NHKTVの井上陽水の特番を観た。〈陽水の50年 ~5人の表現者が語る井上陽水~〉というタイトルである。でも全部を観たわけではなくて、後半を観たに過ぎない。録画はしてあるのであらためて観るつもりなのだが、この重さは何なのだ、という感触でしばらく呆然としていた。それは最後の〈カナリア〉〈結詞〉という曲に拠るところが大きい。

番組内では歌をはさんで、松任谷由実、玉置浩二、奥田民生、宇多田ヒカル、リリー・フランキーといった人たちの井上陽水に関しての言葉があったが、それらはどちらかというと番組の中の彩りでしかなく、すべては歌、それに尽きる。

井上陽水はもちろん知っていたけれど、そして幾つものヒット曲も知っていたけれど、レコードやCDを買って聴いたことはない。タモリ倶楽部でタモリに 「人望が無い」 などと言われたりしてからかわれていることしか、いままで印象がなかった。単に無知だといわれればその通りなのだが、世の中には知らないことがまだまだ多過ぎる。
YouTubeでとりあえずいくつかの曲を聴いてみる。知っている曲もあるのだが、何かが違う。いままではこれらの曲に、特にその詞に、私は反応してこなかったのだ。反応すべき拠り所がなかったのかもしれない。単なる日本のフォークソングのシンガーソングライターというような認識きりなかったのかもしれない。それが突然崩壊する。ガラスの小鬼が砕けるように、だ。もしくは、何個も複雑に絡み合っていた知恵の輪が一気に外れたような感じだ。でもそれは仕方がないことなのかもしれない。音楽のほとんどはすれ違いなので、どこかで接点がない限り、音楽はただ無為に流れて空中に消えてゆくだけなのだ。それが音楽というものの不思議さなのだと思う。

番組の最後の曲〈結詞〉では歌詞のテロップが縦書きで表示された。そう。日本語とは縦書きの言語であって、こうして横書きでタイピングしているのと、手で縦書きに書くのとでは、その感覚が違う。

 浅き夢 淡き恋
 遠き道 青き空

YouTubeにはもちろん一昨日の動画は存在しないので、別のライヴでの映像を一応リンクしておくが、一昨日の井上陽水の歌唱はこれまでのライヴとは全く印象の異なる歌唱であって、その歌いかたはあまりに深く色彩がなくて、むしろ危険なかおりがした。歌詞は情景とその情景の中に佇む人の描写だけで、具体的な感情の描写など存在しない。それなのにその言葉の後ろ側にある重さ、あるいは諦念のようなもの。歌はかならずしも楽しかったり悲しかったりするだけでなくて、もっと深い感情にコミットしてくることがあるということを思い知ったとしか今書くことができない。


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井上陽水 GOLDEN BEST
(フォーライフミュージックエンタテイメント}
GOLDEN BEST




結詞/井上陽水 (〜積み荷のない船)
https://www.youtube.com/watch?v=onqSBetOFvg

井上陽水/飾りじゃないのよ涙は
https://www.youtube.com/watch?v=ROHyKC63Jko
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