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僕らだけの未来 — GARNET CROW [音楽]

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すごくマニアックなことを書けば、ゴールドトップのレスポールはレスポール・スタンダードとは音が違うように思う。ゴールドトップはその表面を1色で塗りつぶせばいいだけだから、スタンダードのように杢目云々みたいに材料に気を使う必要がない。サンバーストが経年変化でどうなるか、といったような姦しい評価とも無縁だ。だからそんなに良い材でなくてもいいという話も聞く。
スタンダードだったら、ほとんど黄色にしか見えないレモンドロップが好きなのだが、もちろんオリジナルなんて買えるわけがないから再生産モデルでの話なのだけれど、一度、理想的なレモンドロップを見たことがある。だが色は理想的なのだが、ブックマッチの左右の杢があまりにも非対称なので見送ってしまった。ところがそれ以降、美しいレモンドロップに遭ったことがない。

そもそもゴールドトップがレスポールの本来の色だったのだそうである。ソリッドな塗装は一見つまらないように思えるが、ゴールドトップは角度によって色が違って見えるように思える。ステージで真正面からライトが当たったときの美しさったらない。そして何よりも音が、これは私の勝手な思い込みなのかもしれないが、音が重くて太いような気がする。重いというよりも深いというべきなのだろうか。
そう感じたのはエディ・マネーのライヴのときだった。バックバンドのギタリストがゴールドトップを弾いていたのだが、そのとき初めて、ああこれがギブソンの音だと瞬間的に納得してしまったのである。そのギタリストの名前は覚えていないし、そしてエディ・マネーがどんな歌唱だったのかもほとんど覚えていなくて、でもそのゴールドトップの音だけは覚えている。
だからゴールドトップを弾くギタリストは特別な存在のように思えてしまうのだが、でもゴールドトップとレモンドロップとどちらか1本くれるといったら、きっとレモンドロップを選んでしまうだろう。人間の心とはそういうものである。それともそういうのって私だけ?

GARNET CROWは 「あの」 GIZAに所属していたグループで、会社都合で解散して (させられて?) すでに7年が経つ。その頃はGIZAのヴァリエーションのひとつのパターンくらいにしか思っていなかったのだが、今考えるとその頃のシーンはとても良かったように記憶しているし、すべて名探偵コナンのタイアップ曲と言われてしまえばそうなのかもしれないが、きっとその少し軽薄なテイストが共感できる時代だったのだろうと思う。

なぜゴールドトップのことを長々と書いていたかというと、GARNET CROWの動画をYouTubeで探していたら岡本仁志がゴールドトップを弾いている曲があったからなのである。GARNET CROWはヴォーカル、キーボード2人、ギターという変則的なグループで、だからベースやドラムはバンドメンバーではない。
ヴォーカルの中村由利による作曲とキーボードのAZUKI七による作詞がバンドのキャラクター全体を支配している。〈僕らだけの未来〉のライヴ映像で岡本仁志がゴールドトップを弾いているのだが、ある意味、岡本は単なるギタリストなのに過ぎない。だが、単なるギタリストこそがカッコイイのだ。
AZUKI七の歌詞は常に何か変だし、何か不穏だ (常用しているS90もやや異質だけれど)。

 生まれ変われるなら
 早く君に会いたい
 通り過ぎたときに
 君だけが足りない

歌い出しのこの部分だって、「生まれ変われるなら」 は 「早く君に会いたい」 には接続しない。2行目の 「早く君に会いたい」 の 「君」 が4行目の 「君だけが足りない」 の 「君」 に呼応しているだけだ。AZUKI七も言っているようにそこにあまり意味を求めてはいけないし、これは一種のサウンドなのだと思うことにする。
だから 「水平線に届くまで/君と走りたい」 と歌われていても実際に走ることはなく、「情熱は逃げない/抱きしめ」 と書かれていても、そんなアマちゃんな情熱など最初から信じてはいない。「ない」 の連鎖と脚韻にだまされてもいけない。本音は 「世界は悪意に満ちてゆく」 という箇所にあるのだ。だからAZUKI七はデカダンなのだ。

 言葉じゃできない 会話するように
 輝く君のそばにいるよ
 好きにやればいい
 愛がなくちゃ大差ない
 世界は悪意に満ちてゆく


GARNET CROW/The One — All Singles Best (GIZA)
THE ONE ~ALL SINGLES BEST~




GARNET CROW/僕らだけの未来
https://www.youtube.com/watch?v=I2sikk6yMZE
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