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ジョニー・コールズ《The Warm Sound》 [音楽]

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ソニーミュージックからリリースされているJAZZ COLLECTION 1000というCDのシリーズは、コロムビアとRCAの音源を廉価盤として再発したもので、2014年から2015年にかけての発売なのだが、300タイトルあって (2枚組もあるのでタイトルと呼称) いまだに在庫があるようでセールになっていた。

レア盤というほどのものはないと思うのだが、ジャズなんて余程売れ線でない限りすぐに品切れ・廃盤になってしまう。それに有名盤に限って持っていなかったり (たとえばマイルスの《‘Round About Midnight》なんてあまりに有名過ぎるし内容も知っているし今さら恥ずかしくて買えないだろうと思っていたのだが、ネットなら恥ずかしげもなく買える、ということに気付いて初めて購入。でもmonoってわざわざ断っているのは、じゃstereo盤があるのかと驚くのだがきっとあるんでしょうね〜。たぶん疑似ステだろうけど)、レコードはあるのだけれどCDは持っていないこともあるし、などなど各々の理由があって、それで試しに十数枚買ってみたのだが、注文したもののなかで2点は残念ながら品切れだった。

その2点とはアーマッド・ジャマルとジョニー・コールズなのだが、買い損なったコールズの《The Warm Sound》はあまり有名ではないかもしれないけれど名盤であると思う (ちなみにレコードは持っている)。
ジョニー・コールズ (Johnny Coles, 1926−1997) はニュージャージー、トレントン生まれのトランペッターであるが、リーダー・アルバムも数枚しかなく、決して超有名なジャズ・ミュージシャンではない。彼は主にサイドメンとしての演奏が多く、その最も有名なもののひとつはおそらくチャーリー・ミンガスのグループへの参加だろう。
コールズがミンガス・グループに在籍していたときの同僚はエリック・ドルフィーであるが、その当時のヨーロッパ・ツアーは非常にハードで、コールズは確か途中で身体を壊してしまったのだと覚えている。ライヴの演奏を聴いても、もうひとつ覇気がないのはドルフィーに気圧されているのか、それとも当初から身体の具合がいまひとつだったのかはわからないが、そもそもミンガスというヘヴィーな圧力がのしかかる環境下では萎縮してしまったのではないかという可能性もある。

これはたとえばドルフィーのグループで吹いていたブッカー・リトルにも言えるのだが、ドルフィーとのファイヴ・スポットでのライヴはジャズ史の中で至高の演奏といえる内容であるが、それにもかかわらずリトルの本質は出ていないような感じがする。リトルの場合は、ドルフィーに引っぱられて実力以上の演奏ができてしまったのかもしれないが、リトルの数少ないリーダー・アルバムを聴くと、その志向はドルフィーとは異なるのである (ブッカー・リトルは23歳で亡くなった。夭折したトランペッターには他に25歳で亡くなったクリフォード・ブラウン、そして28歳で亡くなったビックス・バイダーベックをあげておく。内田善美の『星の時計のLiddell』に登場するヒュー・ヴィックス・バイダーベックという名前は彼から採られたのに違いない。この3人のジャズ・トランペッターについてはすでに書いた→2012年08月16日ブログ)。
そしてまたフランク・ストロジャーのアルバム《Fantastic》に参加したときのリトルは、ドルフィーとの演奏とは全く異なった貌を見せるのである (この《Fantastic》も隠れた名盤であると私は思う)。

リトルのことはよいとしてコールズに戻ると、彼はごく正統的なバップからモダンへのジャズの流れの中に基本的な音楽性があるので、ミンガスのような反逆の精神性とはどちらかというと無縁なのだと思う。
wikiによればコールズはギル・エヴァンスのオーケストラをはじめとしてハービー・ハンコック、レイ・チャールズ、デューク・エリントン、アート・ブレイキー、カウント・ベイシー (サド・ジョーンズのコンダクトによる) などビッグバンドへの参加が多く見られる。また、マイルス・デイヴィスの《Sketches of Spain》にも参加しているが、これはギル・エヴァンスつながりだろう。

《The Warm Sound》というアルバムは、コールズの最も良い特質が生かされている。清新な〈Room 3〉から始まり〈Where〉〈Come Rain or Come Shine〉そして〈Hi-Fly〉へと続く流れがとても心地よい。
〈Hi-Fly〉はランディ・ウェストンの書いたジャズ・スタンダードであるが、テーマをかすかなタメのリズムで引っ掛けながら吹くコールズの解釈が、この曲をまさにコールズ節で塗り替えたように思えてしまうのである。
試みとしてキャノンボール兄弟やアート・ファーマー&ベニー・ゴルソンの演奏などと比較すると、これらのほうが楽譜には忠実なのだろうが、コールズの演奏よりも古く聞こえてしまうし、コールズのような洒落たテイストが感じられないのである。


The Johnny Coles Quartet/The Warm Sound
(SMJ)
ウォーム・サウンド+2




The Johnny Coles Quartet/The Warm Sound (1961)

1) Room 3
https://www.youtube.com/watch?v=ncGlXGSgECY
2) Where
https://www.youtube.com/watch?v=FCFuhx9t06A
3) Come Rain or Come Shine
https://www.youtube.com/watch?v=07-u1fzX79I
4) Hi-Fly
https://www.youtube.com/watch?v=VtLzr29rT6s

参考:
The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco/
Hi-Fly
https://www.youtube.com/watch?v=wYSB6dlwHYo

Art Farmer Benny Golson The Jazztet
The Complete Argo Mercury Sessions/
Hi-Fly
https://www.youtube.com/watch?v=0rRrcEiULs0
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